
徳島フェリー乗り場がぐんぐんと小さくなっていく。
先程までの全てを洗い流すような横殴りの雷雨はすっかりあがり、厚い雲の隙間からは太陽の光が筋となって、広い海原と四国大陸を所々照らしている。
甲板から観る四国は、黄色い排気ガスで覆われた町並みの遥か遠く、一面にうっすら見える山並みが雄大で美しい。昨日まで僕もあの山々のいずれかに登っていたのだ。
一度東京に戻らなければならない。職安で手続きをしたり検診を受けたり、ひどく現実的な理由だ。
すれ違った多くのお遍路さん。今頃皆は何処を歩いて、走っているだろう。あの坂は無事に登りきれたか?あの寺は迷わずに辿り着けたか?あの地域では野宿する所が見付けられたか?
彼らには道中無事で、結願することを心から願う。
僕はお遍路という扉を開けた。
開けた扉を締める時は何時で、どんな音をそれはたてて締まるのだろうか。
もうじき、明け方の東京へフェリーが辿り着く。
1番札所〜37番札所区切り打ち、済み。